技術コラム

2025.3.27
環境対応プラスチック

アップサイクルとダウンサイクルの違い

プラスチックごみによる海洋汚染や資源枯渇は、決して無視できない課題です。これまで当たり前のように使用してきた石油由来のプラスチックに代わる、環境負荷の低い素材への転換は、企業の持続可能性を高める上で重要なテーマと言えます。そこで注目されているのが、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックといった環境に優しいプラスチック素材です。これらの素材は、植物由来の資源や微生物の働きを利用して製造されるため、石油資源の消費を抑え、焼却時のCO2排出量を削減する効果が期待できます。しかし、これらの新しい素材も、製造過程でのエネルギー消費や土地利用、最終的な処理方法など、課題がないわけではありません。

そのような背景を踏まえ、私たちが真剣に考えるべきは、単に素材を置き換えるだけでなく、プラスチック製品のライフサイクル全体を見据えた取り組みです。その重要な鍵となるのが、「アップサイクル」と「ダウンサイクル」という概念です。

アップサイクルとは

アップサイクルとは、廃棄されるはずだった製品や素材に、元の価値よりも高い価値を与える創造的な再利用の手法です。単に「再利用」するだけでなく、デザインやアイデア、加工技術を加えることで、全く新しい、魅力的な製品へと生まれ変わらせます。プラスチック加工の現場においては、例えば、製造過程で発生する端材や不良品を、粉砕・再成形して新たな製品の材料として活用するだけでなく、その特性を活かした全く異なる用途の製品を開発することも考えられます。

具体的な例として、当社では卵の殻、コーヒーカス、竹粉、牡蠣殻、バーク、バナナの皮、ホタテの殻、ライスレジンといった通常では廃棄してしまう素材をアップサイクルし、新しくカトラリーとして生まれ変わらせることが可能です。

ダウンサイクルとは

ダウンサイクルとは、廃棄される製品や素材を、元の製品よりも低い価値の製品や材料として再利用する手法です。アップサイクルに比べて技術的なハードルは低いものの、最終的には廃棄物となる可能性があり、資源の有効活用という観点からは限界があります。プラスチック製品においては、例えば、使用済みのプラスチック容器を粉砕し、土木資材や建築資材の充填材として利用することや廃プラスチックを低品質のプラスチック製品の原料として再利用するなどがダウンサイクルの例として挙げられます。

ダウンサイクルは、比較的容易に実施できるため、大量のプラスチックごみを処理する手段としては有効です。しかし、素材の劣化や不純物の混入などにより、再利用できる回数や用途が限られることが多く、最終的には焼却や埋め立てといった処分方法に頼らざるを得ない場合があります。

まとめ

アップサイクルとダウンサイクルは、どちらもプラスチック資源の有効活用という点で重要な役割を果たしますが、より持続可能な社会の実現を目指すならば、アップサイクルの可能性を最大限に追求していくべきでしょう。設計者の創造性と技術力によって、廃棄物を新たな価値へと転換させ、資源循環型の社会の実現に貢献していくことが、これからのプラスチック加工業界に求められる使命だと考えます。

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