技術コラム

2025.6.15
プラスチック成形に関する基礎知識

射出成形機におけるトン数とは

射出成形におけるトン数は、単に成形機の大きさを表すだけでなく、製造する製品の品質、コスト、そして生産効率に直結する非常に重要な要素です。量産メーカーとして、射出成形機のトン数選定は、製品設計の初期段階から深く関わります。

トン数=型締め力とは

射出成形機におけるトン数とは、正確にはその機械が持ちうる最大型締め力を表します。型締め力とは、金型が射出圧力によって開かないように、金型をしっかりと閉じ込める力のことです。単位はtまたはkN(キロニュートン)で表記されます。なぜこの型締め力が必要なのかというと、型締め力がこの型開き力に打ち勝てなければ、金型はわずかに開き、その隙間から樹脂が漏れ出してバリが発生してしまいます。したがって、射出成形機を選定する上で、この型締め力は、製造する製品の投影面積や必要とされる射出圧力に応じて、金型が確実に閉じられる十分な能力を持つ機械を選ぶための最も基本的な指標となります。

量産メーカーにおけるトン数選定の重要性

量産メーカーにとって、射出成形機のトン数選定は、単にバリの発生を防ぐだけでなく、以下の多岐にわたる影響を考慮する必要があります。

①品質維持とコスト効率

不適切なトン数選定はバリの発生に直結します。バリは製品の機能性や外観を損ねるだけでなく、除去作業には人件費や時間、設備投資がかかります。適切なトン数を選定することで、バリの発生を最小限に抑え、製品の品質を安定させ、後工程のコストを削減することができます。

②生産性と稼働率の最適化

適切なトン数の機械を使用することで、成形サイクルタイムを最適化し、安定した生産が実現できます。過剰に大きなトン数の射出成形機を選ぶと、イニシャルコストやランニングコストが無駄になるだけでなく、必要以上に大きな設置スペースを占有することになります。逆に、不足したトン数の射出成形機では、安定生産ができず、不良率の上昇や機械の頻繁な停止を招き、結果として生産効率と稼働率を大きく低下させてしまいます。

③金型への影響と寿命

型締め力が不足すると、金型に過度な負荷がかかり、金型の変形や破損のリスクが高まります。これは金型の寿命を縮め、予期せぬメンテナンス費用や生産停止につながります。適切なトン数の射出成形機を使用することは、金型保護の観点からも極めて重要です。

トン数選定の具体的な算出方法と考慮点

射出成形機のトン数を選定する際には、主に以下の要素を考慮し、必要な型締め力を算出します。

①必要型締め力の算出

必要な型締め力は、以下の簡易式で算出できます。

必要型締め力 (t)=製品の投影面積(㎠)×射出圧力(kgf/㎠)÷1000

例えば、投影面積が500㎠で、必要な射出圧力が300kgf/㎠の場合、必要型締め力=500×300÷1000=150tとなります。

②製品の投影面積

最も基本的な要素は、製品(またはキャビティ)の金型に対する投影面積です。これは、金型に溶融樹脂が射出される際に、その樹脂の圧力が金型を押し開こうとする面積を指します。製品が複数個取りの場合、すべてのキャビティとランナーの合計投影面積を計算します。

投影面積=製品の縦寸法×製品の横寸法

③樹脂の射出圧力

使用する樹脂の種類や製品の肉厚、流動長によって、金型内で必要とされる射出圧力は異なります。一般的に、粘度の高い樹脂や肉厚の薄い製品、複雑な形状の製品ほど、高い射出圧力が必要になります。この圧力は、材料メーカーのデータや過去の成形実績から推測されます。

④安全係数の考慮

上記で算出された必要型締め力は理論値です。実際の成形現場では、成形条件の変動、金型の精度、樹脂特性のばらつきなどを考慮し、1.1~1.5程度の安全係数を掛けて、余裕を持ったトン数を選定することが一般的です。これにより、成形時の不測の事態にも対応できる安定した生産が可能になります。

選定トン数=必要型締め力×安全係数 (1.1~1.5)

まとめ

射出成形機におけるトン数は、単なるスペックの一つではなく、製品の品質、生産性、コスト、そして金型の寿命に至るまで、射出成形プロセス全体の成否を左右する極めて重要な要素です。当社はプラスチックカトラリーの国内トップシェアメーカーですので、トン数が小さい100tや180tの射出成形機を約40台ほど保有しております。手のひらサイズの量産射出成形を得意としておりますので、お困りの案件がございましたら、お気軽にご連絡ください。

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