高度3万フィートの上空で提供される、旅の楽しみの一つである機内食。しかし、その裏側では、毎日膨大な量の使い捨てプラスチック製品が消費・廃棄されているという現実があります。近年、この課題に対する航空業界の意識は劇的に変化しました。かつての「利便性」や「コスト」一辺倒の基準から、地球環境への配慮、すなわち「サステナビリティ」を最優先に考えることが、新たなスタンダードとなりつつあります。
なぜ今、機内食のプラスチック削減が加速しているのか、その背景と、日本の航空会社がリードする先進的な取り組み、そして解決策の主役となる「環境対応プラスチックカトラリー」の可能性について解説します。
この大きな変化は、単なるイメージ戦略ではありません。企業の存続にも関わる、複数の強力な要因によって推進されています。
持続可能な開発目標(SDGs)の達成は、今やグローバル企業の責務です。航空会社も例外ではなく、投資家や社会から、環境、社会、ガバナンスを重視したESG経営を厳しく評価されています。プラスチック廃棄物の削減は、その最も分かりやすい指標の一つです。
日本では2022年4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行され、カトラリーを含む特定プラスチック使用製品を提供する事業者に対し、使用の合理化が求められるようになりました。これは、航空業界を含む全ての事業者にとって、代替素材への移行を具体的に検討せざるを得ない大きな契機となりました。
環境問題への関心が高いミレニアル世代やZ世代が旅行者の中心となるにつれ、企業の環境への取り組みが、航空会社を選ぶ上での重要な判断基準となりつつあります。サステナブルな機内サービスは、顧客ロイヤルティを高めるための重要な要素なのです。
このような世界の潮流の中、日本の航空会社は先進的な取り組みで業界をリードしています。
JALは、「2025年度までに機内・ラウンジで提供する新規石油由来の使い捨てプラスチックを全廃する」という、極めて意欲的な目標を掲げています。その切り札として採用したのが、100%植物由来で海洋生分解性を持つバイオポリマーです。これを機内食の総菜容器やカトラリー包装などに導入し、環境負荷の低減と高い機能性の両立を目指しています。
ANAは、多様な代替素材を適材適所で活用する「マルチマテリアル戦略」を推進しています。2021年からは、国際線エコノミークラスの機内食容器を、サトウキビの搾りかすを原料とする非木材パルプ「バガス」素材に刷新。カトラリーは木製、ストローは紙製へと切り替え、年間で約300トン以上のプラスチック削減を実現しています。
JALやANAの取り組みに見られるように、「脱・石油プラスチック」の受け皿となる素材は一つではありません。その中でも、従来のプラスチックの持つ成形性や機能性を維持しつつ、環境負荷を低減できるのがバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックです。
トウモロコシやサトウキビといった、再生可能な植物由来の資源(バイオマス)を原料として作られるプラスチックです。石油資源の使用を削減できるだけでなく、植物が成長過程でCO₂を吸収しているため、燃焼させても大気中のCO₂を増やさない「カーボンニュートラル」という性質を持ちます。
使用後は、微生物の働きによって最終的に水と二酸化炭素にまで分解され、自然に還るプラスチックです。特に、JALが採用した素材のように「海洋生分解性」を持つものは、海洋プラスチックごみ問題への直接的な解決策として、大きな期待が寄せられています。
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